「泣いてたよ」

 ああそうか。

「聞いてる?」

 聞いてるよ。それで?

「行ってやれよ」

 何故?
 いちいち報告するなよ。関係ないだろ。

「関係ない? ちょっと、本気で行ってんの?」

 本気も冗談もあるかよ。

「…………」



 向こうから話しかけてきたというのに、不機嫌そうに踵を返すというあまりにも無礼な反応をされてしまった。
 下手に噛みつかれるよりもその方がいいのかもしれない。いや、絶対にいい。だがしかし悲しいかな、のどの奥に感じた不快感は否定できそうにない。ああ、苛立たしい。


 馴れ合い群れながら生活することに賛否を述べる気はない。どちらが正しいかなんて馬鹿馬鹿しい問答は、その節々によって答えを変えるだろうから。
 けれど一個体として一個人しての意見を示すことを許されるのなら、嫌いだ。他人に合わせて生きるなんて馬鹿げている。

 一人は自由だ。
 そして一人でいるからといって必ずしも独りになるとは限らない。否、なれるとは限らない。
 何故なら一人は唯一ではないからだ。

 自分の道から少し外れたところには必ず誰かがいる。誰しもが常に誰かの影を踏んでいるだろうし、常に誰かに影を踏まれているだろう。
 そして必ず、いつかは誰かとぶつかるだろう。

 だから、もし誰かが必要ならその時近くにいる誰かと共に歩けばいいんだ。そして道が違う方向を指すことを実感したときに、また自分の道をいけばいい。決して誰かを追わずに。


 それが楽な生き方なんだ。そうして生きてきたんだ。
 なあ、それをわかってくれていたんじゃなかったのか?

 何であんな顔をされなければいけないんだ。



 他人のために涙を流すなんて認めない。一度だけ振り向いた瞳から零れ落ちたそれは偽善の証なんだと自分に言い聞かせるように心の中で何度も何度も何度も何度も何度も繰り返した。


「何のために、あんたがいるのさ」


 何のため?
 別に何のためでもないし、誰のためでもない。ただ自分のために自分はいるんだ。君は君自身のためにいればいい、あいつはあいつ自身のためにいればいい。

 だから。
 自分のために存在しない君はいらないんだよ。
 自分のために存在しないあいつはいらないんだよ。

 ねえ、分かる?
 好きだったのは、



笑顔ではないあなたを、あなただなんて認めない
070831 // gdgdしつつも、2周年ありがとうございます。
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