食卓の上に冷めた朝食が置かれている。ラップがかけられたおかずと、鍋には少量の味噌汁。人の気配はない。

 部屋干しされた洋服から適当なものを選び取って着替える。靴下を探したが見つからなかったので、素足で廊下を歩いた。染み込むような冷たさは、もう二つの季節が過ぎてしまったのだよと静かに語りかけてくるようだった。
 ひたひたと足音すらも静かに消えていく。
 窓から入ってくる短い陽の光を浴びないように、部屋へ戻った。

「………………」

 このまま、
 このままもう一度眠ってしまおうか。もう何もしたくないんだよ。
 ここにはいない誰かに言い訳するように独り言ちた自分に、開きっぱなしのパソコンのディスプレイが笑う。中に入っている全ての軌跡を消してしまいたいけれど、それをする蛮勇は自分にはない。

 足元に散らばった手紙に書類。詰まれた教科書の山と開きっぱなしの通学鞄。畳まれた洗濯物が箪笥の前に置かれていた。
 乱雑な部屋は既に自分の城ではないような気がする。

 本気でもう一眠りしようかと考えて、ベッドの脇に放置された携帯電話に気付いた。
 そういえば、充電してなかったっけ。持ち上げようと手を伸ばしたとき、携帯が震え、家族からのメール着信を示す緑の文字。
 何も考えず、ボタンを一つ。

 『お昼いる? 買って帰ろうか?』

 ………………。
 母さんは、どんな気分でこのメールを打っているんだろう。どんな気分で子供の朝食を用意して出かけていったんだろう。
 もう顔もまともに見られない。大切だと分かっていても、正しいと分かっていても、それでも鬱陶しいだなんて不謹慎な思いを抱いてしまう自分を呪う。

 誰かに理解して欲しいのに、傍に居て欲しいのに、それを強請れるほどに子供ではいられない。全てを理解されてしまうのを不快に思うのは、自分の浅さを知っているから。
 自分がこんな風に育ってしまったのを、知られるのが嫌なんだ。

 ……ああ、



( 生まれてきて、ごめんなさい。 )
060927
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