「ああああああああ!!」
「耳元で怒鳴るなって、煩いな」
「おまっ……! 何で俺より1ミリ上なんだよ!!」
「……は?」





≪ 団栗と木偶 ≫








 幼馴染みである眼鏡は、俺様の子分に相応しい才能を持っている。
 成績は常にクラスでトップ。苦手な教科もないし、運動神経も良い方だ。
 流石だね、俺の子分!

 だけどな、だけどな……!
 俺より背が高いっつーのは許せねぇ!!

「コラ、誰が子分なわけ?」

 うぉ、眼鏡! 読心術か?!
 コイツには前々から魔王の風格があると思ってたんだ!
 今時の魔王は勇者の心も読めるんだぜ?
 んで俺はゲームの中でも現実世界でも魔王に悩まされるんだな!
 くそ、あの魔王め、レベル高すぎるぞ!
 何でゲームのプレイヤーの動作を先読みできるんだ……?

「つかあんた声に出してるし。しかも魔王の風格って何」
「いや、何か魔王って頭良さそうじゃん?」
「勿論否定しないよ、それは」

 しろよ。

「無駄な嘘は吐かない主義だしね」

 そう言って眼鏡はにやりと笑う。
 うおお、笑いやがって。魔王め。
 お前のあだ名は今日から「眼鏡魔王」だ!

「くそ……こんな事になるんだったら少しでも背伸びしとくんだった……!」
「あのさぁ、身体測定って競争する為にあるんじゃないでしょ」
「いや、競争する為にある! 全ての数字は比べる為にある!」
「昔の自分と比べる為にね、他人と比べる為にある訳じゃない」

 この野朗、何だか難しくてかっこよさげなこと言いやがって!
 悔しい、すごく悔しい。
 身長で負けたら俺は眼鏡に何で勝てばいいんだ!

「よし眼鏡、体育で勝負!」
「負ける勝負はしない主義。算数ならやってもいいよ」

 間髪いれずに断られた。
 ガッテム!

「……それ死語じゃない?」

 身体測定の結果が書かれた紙を引き千切ろうとした俺の手から、不戦勝ってことにすれば?と言いつつ、眼鏡はそれを抜き取った。

「ほら、あんた体重は勝ってるよ」
「それは何か、俺がお前よりデブだと言いたいのか?!」
「んなこと言ってないけど……。あ、視力は余裕で勝ってるじゃん」
「かっこよくないからイヤだ!」

 次の身体測定、次の身体測定までには何とかして身長を伸ばしたい……。
 そして眼鏡魔王を倒すんだ。
 剣も魔法もいらない、超平和的な勝負方法!

「めーがーねー……身長伸ばすコツって無い?」
「コツとか、聞かれても困るんだけど。……毎日懸垂一時間?」
「できるかぁー!」

 努力無しでは何も出来ないよ。
 いや、そりゃそうだけど、何か懸垂は違くね?

「じゃ、カルシウムを沢山とればいいよ。そうすれば伸びるから。」
「……カルシウムって何だっけ?」
「ほら、牛乳に入ってるやつ」
「ああ、あれか! よし、打倒眼鏡!!」





「ほらぁ、見ろ眼鏡!!」

 半年後。俺は眼鏡の目の前に測定表を見せびらかした。
 俺すげぇ。流石俺様。
 魔王に下克上を誓ったあの日からずっと牛乳を飲み続けた甲斐があった!
 何と3ミリメートル眼鏡を上回った!!

「ふぅん……」
「ははは、悔しかろう眼鏡魔王! 悔しくて声も出ぬか!」

 魔王の座を奪い取り(なりたかねぇけど)高笑う俺様に、眼鏡は一言。


「木偶の坊だね」


 負け惜しみとは醜いぞ、眼鏡!
 ははははは、はは、は……畜生、勝ったのに敗北感が!



 そして後から知ったが、眼鏡は牛乳が嫌いだったらしい。
 そういやあいつ、給食の牛乳いつも残してたような……。

 ……。

 眼鏡め……!








06.03.12
相互記念?に差し上げる約束をしたものです…;
律さんのみ転載可です。遅くなって申し訳ありませんでした;



いつか見下ろせるようになりたいもんだ

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