「あー……死にたい」







「何です、いきなり」
「もう疲れた……」
「誰だって疲れることくらいありますよ」
「死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい」
「黙りなさい。聞いているこっちが疲れます」

*

「だってさぁ……生きてたって何にも良いことなさそうじゃん」
「何にも?」
「……そりゃ、多少はあるだろうけどさぁ。でも……自分が生きていて何になるんだろうって思わない?」
「思いません」
「エゴイスト」

*

「結構。で? それがどうしました?」
「疲れたんだよ。見渡す限りに広がるのは、大人たちの醜聞、醜聞、醜聞。こんな世界の未来に、何の希望が持てるっていうのさ」
「青年らしい苦悩ですね。鬱ですか」
「鬱かなぁ……。それに、自分が死んだって何にも変わらないじゃん?」
「哀しむ人がいるんじゃないですか、貴方にだって少しくらい」
「……少し?」
「少し」

*

「……自分が死んだら周りの人達がどうなるかなぁって真剣に考えてみちゃった訳よ」
「へぇ……」
「自分が死んでもさ、周りの人達は哀しむだけじゃないかな。…実際何が変わるって訳でもないんじゃないかな。部屋が少し広くなって、うちの食費が少し減ったりして、終わりじゃん」
「……」
「これから生きていくのにいっぱい金かかるじゃん。寧ろ自分が死んだら、親の負担とか減るかもしれないし? それにどっかの貧民さん達とかが、自分がこれから生きていくのに必要なお金を使えば何十人も助かるかもしれない」
「……」
「誰にも迷惑をかけないなら、死にたいよ」
「……ふぅん」
「疲れた」
「一言感想」
「どうぞ」
「馬鹿でしょう貴方」

*

「……馬鹿って何さ?」
「馬鹿というのは愚かでつまらないことです」
「……あんたにとってはうら若き一般青少年達の苦悩なんて取るに足らないものだって? モラトリアム否定しますか?」
「まぁ、それも言えます」
「言えるんかい」

*

「僕のクラスメイトに少年A君が居ました。少なくとも口頭及び行動では友達でした」
「あんたにも友達いたんだね。で?」
「自殺しました」
「……」
「学校側がこの件を生徒に公表することはありませんでした。通夜に行ったのは親しかった僕と数人だけ」
「……」
「噂にはなったけれど、人の噂も四十五日」
「七十五じゃないの?」
「七十五日も同じ噂で満足できるような生徒はいませんでしたね」
「……」
「彼の親は通夜で泣いていましたよ。けれどね、その他大勢の人間には何の影響も与えなかった」
「つまり、さ。何が言いたいの?」
「つまり自殺とは貴方にとっての行き過ぎた現実逃避であると」
「……」

*

「という訳で自殺なんて浅慮で有象無象の一になるような行為は改めましょう」
「ああ、そう。これって自殺防止対談だったんだ」
「いえ、ここは止めた方がいいかなぁという僕なりの好意です。正直どうでもい……」
「本心をバラすな」

*

「えーっと。つまり、僕、相互依存って良い事だと思うんですよ」
「は……?」
「ああ、素晴らしきかな相互依存」
「素晴らしくないよ」
「いや、だって、ねぇ。必要不可欠な存在って素晴らしいですよ」
「支え合うのと依存するのは違うでしょ」
「支え合う程度じゃ駄目です。代わりがいくらでも居ますからね。必要不可欠でなければ駄目なんです」
「……ふーん」

*

「とても素敵だと思いませんか。自分が死んだら後を追ってくれるような、そんな人がいれば」
「いない、よ。そんな都合良い人間」
「『共に生き、共に死のう』。麗しきかな思慕の情」
「いや、動機不純…」
「代用品のないような存在になりたい。誰かにとって絶対、唯一、無二の存在になりたいと思いませんか?」
「……」
「全てにおいてその他大勢のままで死にますか? 誰にも何も残さずに、この世界から逃げますか?」
「……別に、本気で死ぬとか言ってる訳じゃ……」
「まぁ、僕はどうでもいいですけど。死ぬなら僕に見えない場所で。死にたい死にたい連呼すると怒りますよ」

*

「つまり、だ。この糞長いお話しは結局あんたのご都合主義な理想論ってわけだね」
「当たり前じゃないですか」
「意味分かんない訳分かんない。絶対とか唯一ってありえないよ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
「そうですか……では、」
「では?」
「では、そんな厭世観溢れる貴方に提案があります」
「……何」



「僕のペットになりませんか?」





だって、対等の人間に依存する事はできないから

06.01.31 // 繋げ方が強引ですね。

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