私だけを見て欲しかった。

 私の知らない誰かと笑い合う姿が、寂しい。
 私の知らない事を話す笑顔が、寂しい。

「――おーい、どーしたのー?」
「え……あ、ご、ごめん。ボーっとしてた……」
「気にしないでいいよ。いつもの事じゃん」

 一緒に笑い合うのが楽しい。
 下らない冗談を言い合うのが楽しい。
 でも、私の知らない誰かと知らない話をしているのが、寂しかった。
 小さい頃から友達だった、貴女が。




「付き合うことにしたんだ」

 その日、照れたようにそう告げられた。
 私に一番最初に教えてくれたんだって。
 それが凄く嬉しい。

「例の野球部員の人? 良かったね!」

 前々から彼の話は聞いていて、それを話す顔が嬉しそうだったから。
 幸せになって欲しいと、心から思った。
 スポーツが好きで得意な人同士、お似合いだと思った。

 その日はお互いに部活がなかったから、一緒に帰った。
 駅前でアイスを買って、一緒にお店を回って。
 楽しかったけど、やっぱりこれからは彼氏とデートとかするんだよね。
 自分の知らない人と笑っている所を想像すると、寂しかった。

「あんたも早く誰か好きな人見つけなよ。可愛いからモテてるし!」
「そ、そんな事ないよ……!」

 夕日に照らされた笑顔が眩しい。
 嬉しそう。幸せそう。

 人気のない住宅街に入ると、明るい声が宅地に響いた。
 夕日も貴女を祝福するように温かく世界を照らし出している。

 目を細めて貴女を見ていた私は、足元を見ていなくて。
 歩道に落ちていた大きめ石に躓いて転びそうになった。
 よろけた私を、何やってんの、と笑いながら、彼女は数歩先を歩く。
 待ってと言いつつ、体制を立て直して慌てて追いかけようとした。
 そこで、私の躓いた石が目に入る。

 何でこんな所に石なんて落ちているんだろう。
 この辺に住んでいる子供の悪戯かな?
 生垣に置いてあった石をまな板にして、ままごとでもしたんだろうか。
 何故かそれが、妙に気になった。


 先を歩いていた幸せな人が、笑顔のまま振り向いて、急に足を止めた。
 自分の後ろで自分の影を踏んでいる私を、じっと見つめている。
 信じられないものを見たような顔をして。
 どうしたの?


 ドゴッ


 鈍い音が響く。
 目の前で、倒れた。
 頭から血を流して。
 ……あれ? 何でこんな大きな石なんか持ってるだろう、私。


 倒れている体。血のついた凶器。
 赤い赤い夕日の中で、一人ぽつんと立っている私。
 紅い紅い血を流して、倒れている貴女。


 血の気が引いていくのが分かった。足が震える。
 今鏡を見たら、真っ青な顔をしているに違いない。

 遠くから、人工的な高い音と、夕日よりも赤い光。


 何で?



 何 で こ う な っ た の ?





私は何一つ、嘘なんて吐いていないのに。

05.08.31 // 強すぎた独占欲。…百合にしたつもりはないです。
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title:少年はにびいろをした不可避の幻を見る