「ほんっとに、この歌詞、慶ちゃんが書いたの?」



「だから、そうだって言ってんだろ」



「ほんとのほんとに?」



「ほんとのほんとに!」



「ギター弾いて慶ちゃんがこれ歌うの?踊らずに??」



「ギター弾きながら踊るのは厳しいと思うんだけど?」



「だよね(笑)
 ねぇ、慶ちゃん……この歌詞は実話?慶ちゃんの気持ち…?」


俺のデビューシングルのサンプル盤を食い入るように見てたは、
3曲目の歌詞を指差して俺の顔を覗き込んできた。







「んー、半分はそんなとこかな…」



「そう…なんだ。。」


は急に静かになったかと思うと、再び歌詞カードに視線を落とした。




































Voice07. 愛のカタチ






























やばい。


マズったかな…










「この声が届くように…かぁ。


 慶ちゃん、あの子のこと、こんなに好き…だったんだね。。」



「あの子…?、何言ってんの?」


俺が何のことだか分からずにいると、は黙ってテレビを指差した。














そこには、某メーカーのCMが流れていた。




CMキャラクターは、そう。


彼女だった。










2年ほど前、俺を奈落の底に突き落とした彼女だった。











 
 まさか、あんな話ずっと信じてたの?」



「だって、慶ちゃん何も言わなかったもん」








根も葉もないでっち上げに、

今まで築きあげてきたものも、
信じてきた人たちも、

多くのものを奪われて。







当時の俺は、いちばん大事な人に何も伝えてなかったことに今更気付いた。














が何も言わず、
変わらない態度で隣にいてくれたことに甘えてた。。








冷静に考えてみれば。




当時。

上京して半年、
デビューして1ヶ月だったがこの業界の裏なんて理解できるはずもなかったんだ・・・






なんで、あの時そんなことにも気付けなかったんだろ。



最悪だ。。。













「あんなの根も葉もないでっち上げに決まってるだろ。
 が上京してきてから、俺が誰か女の子と頻繁に会ってるように感じたことあった?」




「それはない…けど。。

 でも、慶ちゃん何も言わないし、私の前であの話題にすら触れないから……


 逆にほんとのことなのかな、って思ってた。事務所に別れさせられたのかなって…」






ってば、変なとこだけ業界事情に精通してるし。。



そりゃ、今はもうも立派に有名なアーティストだから当たり前だけどさ。














でも。


俺はずっとを想ってきたのに。。







ありえない誤解すぎるよ。














歌をうたう人になりたいって、
小学生の頃からお互いの夢を語り合って。





いつも隣にいたのはだった。













でも。

7年前、俺のが先にチャンスを掴んで福岡を離れて上京して。







初めて離れた俺たち。












俺が上京する時、が言った言葉。



“慶ちゃんなら、きっと大丈夫。がんばって”

“離れても、ずっと慶ちゃんが大好きだよ”







あの言葉に支えられて、
でも離れたら今までのようにはいられなくて苦しくなった時もあったんだ。








離れたあの頃の俺たちはまだ幼くて、
幼なじみでしかなくて、
“大好き”なんて言葉も小さな頃からの当たり前のやりとりになってて、
恋人とは違ったから。




あの日の自分の幼さを何度悔やんだか分からない。










今はまた昔と変わらずが俺の隣にいるから、
東京という同じ都市で暮らしてるから。





が上京するまでの4年間、
悔やんだり苦しんだりした、
そういう気持ちを振り返って書いた曲での考えてたことを知るなんて…










なんて俺は馬鹿なんだろう。。




























「マジであの子とは何もないから。。

 てか、俺…ずっと好きな子いるし」




「ずっと…?」



「うん、ずっと。小さい時からずーっと」



「小さい時って、福岡にいた頃からってこと?」



「そう。俺、が好きだった。
 ずっと好きだった。

 今も好きだよ、もちろん」




「ほんと…に?」


は驚いた表情を俺に向けた。





「うん、ほんと。
 幼なじみだからとかじゃなくて、一人の女の子としてが好きってことだからね?」


俺はの目を真っ直ぐ見つめて、そう告げた。











ずっとずっと。

福岡にいた頃から、
ちいさな頃から、
ずっと想ってきた気持ちを。。











「…私も……慶ちゃんが好きだった。
 ううん、今も好き」


それだけ言うと、は涙で言葉を詰まらせた。





















 俺と付き合ってくれる?」



「……………」


私は慶ちゃんからの言葉に何も答えられなくて黙り込んだ。


















慶ちゃんのこと、ずっとずっと好きだった。



慶ちゃんのあの噂が出た時も、
すごく悲しくなって、
いっぱい泣いた。









でも。

愛の形なんて1つじゃなくて、
10人いれば10通りの形があると思ってきた。







だから、
幼なじみとしてでも慶ちゃんの傍にいられるなら、
同じ夢を追いかける仲間として慶ちゃんの傍にいられるなら、
そういう形もありだと思ってきたの。









人は人、私は私。

私の慶ちゃんに対する気持ちはそれでいいと思ってたの。







ただ、ただ。

慶ちゃんの傍にいられたらいいって。





今は離れてるわけじゃないから、
慶ちゃんがいてくれたらいいって。



















けど、ほんとは我慢してた。







ずっと、慶ちゃんの彼女になりたかった。


世の中の恋人同士みたいに手を繋いで歩きたかった。









でも。

私たちには夢があったから。




自分のそんな気持ちは持ち続けるわけにはいかないって。






誤魔化して、蓋をして、しまい込んで。



自分の気持ちと向き合い続けることに臆病になってたの。










だけど、もう臆病な自分とサヨナラしてもいいかな?




慶ちゃんの言葉に頷いてもいいかな…?




















、ひょっとして…

 仕事のこととか、俺らの立場とか考えてない?」




「え…?」


は俺の問いかけに間抜けな声を出した。










わかるんだ、何となく。



俺も自分の仕事や立場があるから、
が上京してきてからも自分の気持ちを誤魔化してきた。






自分の気持ちと向き合うことよりも、
と一緒にいられることを選んでた。










けど、そんな臆病な自分は捨てる。



に誤解されてるままなんて、ありえないから。













「もちろん、にとっても俺にとっても仕事は大事だよ。
 ずっと夢だったことを形にできてるわけだし。
 守らなきゃならないもんも沢山あると思う。

 でもさ、やっぱり俺は好きな人には好きって言える自分でいたいし、
 がいてくれたから今の俺があるんだよ」



「慶ちゃん…」



「あの噂が出た時に、何もかもが信じらんなくなった。
 メディアも業界の顔見知りも、ほんとに全部がイヤんなって。
 本当のことすら言わせてもらえない自分の仕事すら嫌になった。
 でも、それでも…

 は変わらずに傍にいてくれたから、迷っても原点に戻れたんだよ。
 俺は歌が好きなんだって。
 何があっても負けずに歌っていこうって。涼平くんと龍一くんと一緒に。


 だから、とのこと、ちゃんとしたいんだ。
 は?は俺と付き合うのは嫌…?」








この世界に入ってから強がりで武装してきたけど、
ほんとの俺なんて弱気なとこもいっぱいあって、
涼平くんや龍一くんと一緒にいてグループで活動してるくせに孤独感が拭えなかったりもして。





それでも。

がいてくれたから、俺は俺のままでいられたんだよ。






ってよりは、
そんな俺だからこそが必要って言った方が正しいかな。。














「……嫌じゃない、嫌なはずないっ…!」


黙り込んでたは急に感情的に言葉を発したかと思うと、今にも泣きそうな瞳を俺に向けた。










「それは、イエスって受け取っていいってこと?」



「うん。。」


は手を膝の上に置いたまま、コクリと頷いてくれた。










「よかったー。ともう一緒にいらんなくなったらどうしようかと思った」


俺が安堵のため息を洩らすと。




「何、それ。そんなことあるはずないよ。
 私には慶ちゃんが必要だもん。
 慶ちゃんがいたから、私も夢を追い続けてこれたんだよ?」


はフワリと優しい顔で笑った。





「俺だって、そうだよ。
 が上京するまでずっと、誰よりもに俺の歌聴いて欲しくて頑張ってた。

 それに……」



「それに?」


は、言葉に詰まった俺の顔をキョトンとした表情で覗き込んだ。









が上京してからなんだ、ギター真面目に頑張り始めたの。
 の影響だよ。
 自分で詞書いて曲作るを近くで見てきて、俺も頑張んなきゃって思ってさ」



「ウソ…」



「ほーんと。
 俺がソロやるのにギターを相方に選んだのだって、がいなかったらありえなかっただろうしね」



「…っく…ふぇ……慶ちゃんっ……」





慶ちゃんの穏やかな笑顔に、
想いを告げる言葉に、
涙が溢れた。


と同時に、私は慶ちゃんに抱きしめられた。。
















、好きだよ。
 ずっと、ずっと、こうしたかった…」


俺はを抱きしめる腕に力を込めた。












今、ずっと抱きしめたかった人が自分の腕の中にいる。







これから先。


俺たちの立場や、
俺たちのいる世界、
俺たちの夢が、

また俺を、俺たちを傷つけるかもしれない。







だけど。


今度は一人じゃないから、きっと大丈夫。

二人だから。



どんなことにも負けないはず。

















「慶ちゃん。
 やっぱり、慶ちゃんは私のヒーローだよ」


は腕の中から俺の顔を見上げてきた。




「え?」



「いつも、いつも私の先行くんだもん。
 夢へのチャンス掴むのも、上京したのも、こうやって自分の気持ちと向き合うのも何もかも」


「そんなかっこいいもんじゃないよ、俺は…

 たぶん、ソロ始めたらボロボロになりそうな気するし。いろんな意味で。。」



「ボロボロ…?」



「そ、ボロボロにね。
 すでにファンの間でも賛否両論すごいことになってんのも聞いてるし、
 一人で臨む仕事で失敗もすると思うし。

 ソロなんてやる意味ないかもしんない……」



「そんなことないよ。
 人生に無意味なことなんてないよ、私はそう思うもん。
 だから、頑張って。
 何があっても、慶ちゃんは私のヒーローだから。

 私、慶ちゃんの書いた詞すごく好きだよ?」



「ん、ありがと」


をもう一度しっかり抱きしめた。














成功するかどうかなんて未知数。


新しいことを始める時は、いつだって不安もつきもの。






それでも。

にとってのヒーローで居続けられるように、
夢を形にしていくに俺も胸を張っていられるように、
頑張ろうと思う。











きっと、がいてくれたら、どこまでも頑張れる。









































−1年後−





「もう夏終わっちゃったから、人少ないね〜」



「たしかに、てかそんなとこまで行くと濡れるよ」







「大丈夫だよー!慶ちゃんもおいでよっ」


波打ち際で、寄せては返る波を相手に楽しそうな顔を見せるは俺を手招きした。














付き合い始めて今日でちょうど1年。




去年、が主演した映画の舞台になった海までやってきた。



シンガーなのに、
真っ直ぐな演技で高い評価を得て。


俺とは大違いだったよね(苦笑)












は俺より多才なのかもしれない。






すっかり今ではも一流アーティストだもんな。



チャート上位の常連。

ライブもやる度、チケットは即完売。

新曲を出せば大きいタイアップ。

CMもラジオも引っ張りだこ。











それでも、いつも俺の隣で無邪気な笑顔を見せてくれて。


に『慶ちゃん』って呼ばれる度に、俺はホッとする。
















俺もこの1年。


負けずに頑張ってきたよ。






w-inds.としての活動も、ソロの活動も。


アルバム出して、シングル出して、ライブやって。



精一杯、今の自分にできることをやってきたつもり。












の目には、どう映ってたかな?


























ー!こっち戻ってきてよ、大事な話があるからーーー!!」



「えー、もう!わかったーーーー」


俺の言葉に不満そうな顔をしたが俺の方へ駆け寄ってくる。
















1年記念日の今日。


改めて、に告げるよ。









俺にとって、は何より大切だよ。って。



好きなところも…ね。





















*END* 






Postsript.


はーい、またしても更新はけいたくん短編でした。
すみません、偏ってて(汗)


しかも、ついに順番もすっ飛ばした更新になりました。。

更に最後が半端すぎるお話でした。。

最近ほんとにいつもに増してダメですね。
パッとしない文ばかりです、ごめんなさい。

それでもここまで読んで下さった皆さん、本当に!ありがとうございます(ぺこりっ)


さて、今回のお話はブログでちょこっと書いてたりするのですが。
当サイトと全く関係ないサイトで連載しようかと構想中(実は2話まではアップ済み)のお話の土台な物語だったりします。

さちが考えている設定に『愛のカタチ』の世界を混ぜたので、
かなり分かりにくいお話だったかと思います(滝汗)

いちお言い訳ながらに解説しますと・・・
主人公はけいたくんと同じ福岡出身のシンガーなのです。

それもw-inds.のけいたくんとは系統が全く違うシンガーです。

ギター片手に自分で作詞作曲した歌をうたうシンガーソングライターです。

そんな彼女はけいたくんとは幼なじみ。

けいたくんより遅れること4年、大きなオーディションでチャンスを掴んで東京に出てきたという設定です。

というか、この主人公にはモデルにしてるシンガーさんがいます。

読んでて気付かれた方はすごい!(爆)

ヒントは結構いろいろ散りばめられているので、もし思い当たる答えが浮かんだ方は是非メールかBBSに書き込みを下さい☆(ぇ)

んー、最大のヒントはどこかなぁ。
最後のシーンかも?

海と映画。

それが当てはまるシンガーさんですね、ハイ。


幼なじみとして同じ夢を持つ二人の恋は平穏ではないと思います。

ましてや、互いに夢を叶えてしまったなら尚更に。

そーゆー部分を描きたくて、今回はこんなお話になりました。

平穏でなくても、難しくても、
きっとけいたくんなら誰よりも彼女を大切にするかなぁ、なんて。
それが幼なじみなら殊更に、ね。

以上です。
長々と語らってしまって、すみませんでしたー。





拙い文章ではございましたが、感想頂けましたら励み、そして参考になります♡♡感想はコチラ★

UP☆2007.5.27(written 3.11)


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